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作曲家、一柳慧に聞く 「現代音楽」は今も現代の音楽か - 産経ニュース

「フェスティバルは絵画や建築など他の芸術分野の人々にも聞いてほしい」と語る作曲家、一柳慧=東京都渋谷区
「フェスティバルは絵画や建築など他の芸術分野の人々にも聞いてほしい」と語る作曲家、一柳慧=東京都渋谷区

 作曲家の一柳慧(いちやなぎ・とし)(87)は、20世紀後半を代表する音楽界の巨人の一人だ。留学先の米国で体験した新しい音楽を日本に持ち帰った功績は大きい。その音楽は「現代音楽」と呼ばれて今に至る。だが、それから半世紀以上。現代音楽は果たして21世紀も現代の音楽なのか。一柳に考えを聞いた。(石井健)

 「私は、『現代音楽』という言葉が好きじゃない」

 現代音楽を持ち帰った張本人の口から意外な言葉が飛び出した。

 昭和29年に米国に留学した一柳は、米作曲家のジョン・ケージらと実験的な音楽の創造をたっぷりと経験。36年に帰国して自作やケージの曲を披露して、日本の音楽界に大きな衝撃を与えた。

 「しかし、他の国は『現代の音楽』と呼んでいます。『現代音楽』と漢字が4つ並んだ名詞は、いかにもお堅く難解なイメージを与えたのではないでしょうか。現代の音楽と呼んでいたら、もっと時代性や社会性を帯びた音楽になっていたかもしれない」

 一柳が米国から持ち帰った音楽は、それまでの規則から自由になろうとしていた。例えば、ケージには「4分33秒」という曲があるが、その譜面は4分33秒間の無音、つまり何も演奏しないことを指示している。そうした自由で大胆な発想の音楽が生まれた背景を一柳は次のように説明する。

 「20世紀は前半に2つ大戦があり、人々は後半に一気に解放された。音楽においても、非常に自由な気分が一気に出た」

 同じ頃、ジャズの世界でも、トランペット奏者のマイルス・デイビスが従来の規則から離れた演奏方法を生み出していた。時代の大きな波から、さまざまな“現代の音楽”が誕生していたともいえる。

 だが、一柳は自身が持ち帰った音楽は、もう一度殻を破るべきときだと考えている。

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