洋風の旧邸宅を使った現代美術専門の私立美術館「原美術館」が、来年1月に閉館することになった。品川区の閑静な住宅地で約40年間、日本の現代美術館の草分けとして知られてきた。老朽化が理由で、今後は群馬県渋川市の別館に活動拠点を集約。「原美術館ARC(アーク)」と名を変え、来春にも新たなスタートを切る。
机の上に、描きかけの素描、人形、ワインの空き瓶…。二階の一番奥の部屋そのものが、常設展示の作品になっている。現代日本を代表する画家の一人、奈良美智(よしとも)さんが自身のアトリエをイメージしたという。
「ここは主寝室のバスルームだった部屋。館内でも人気の作品です」と職員が説明した。
建物と一体になった展示作品は、別室やトイレなどにもある。庭園には、日本を拠点に国際的に活躍する美術作家、李禹煥(リウファン)さんらの作品が点在する。
原美術館は一九七九年に開館。前館長の原俊夫さん(85)が、祖父で日本航空会長などを務めた邦造氏の邸宅を改装した。
銀座の和光ビルなどを手掛けた建築家、渡辺仁が設計し、三八年にしゅん工。白い外観のモダニズム建築で、戦後は連合国軍総司令部(GHQ)に接収され、将校の宿舎として使われたこともある。
原さんはかつて海外留学中、「日本の芸術の紹介は伝統的な作品ばかりで、現代の作家ではない」と違和感を持った。デンマークで私邸を改装した美術館を訪れ、空き家だった邦造氏の邸宅の利用を思い立った。
「権威のお墨付きのうのみではなく、自分の感性で評価できる今日のアートとして、現代美術に魅力を感じた。いつでも見られる美術館を探したが見つからず、ないなら自分でやろうと思った」と振り返る。
当時は現代美術専門の美術館はほとんどなく、周囲からは「だまされている」と心配されたり、「がらくたを集めている」と冷やかされたりしたという。
開館初期から運営に携わる内田洋子館長(60)によると、最初の十年間の八〇年代は、日本の若手作家の発表の場としてグループ展をはじめ、世界的な作家の作品も展示。九〇年代には、日本の作品を海外で紹介する国際展を開いた。
「現代美術を普及させる当初の目的は、ある程度は実現した」と二〇〇〇年ごろからは、独特の空間で作品と相対する個展など、原美術館ならではの表現にこだわってきた。
建物はしゅん工から約八十年が経過し、老朽化したため改修を検討。今のデザインを生かしたままのバリアフリー化などはできないことが分かり、一昨年に閉館を発表した。今後の利用方法は決まっていない。
これまで原さんが集めた収蔵品は約一千点。前衛芸術家の草間弥生さんには「(なかなか国内で評価されなかったが)日本で最も早い時期に作品を買ってくれた」と感謝された。
作品を常設展示している奈良さんは、無名の学生時代、よく訪れて長い時間を過ごした。かつて個展を開いた美術家の横尾忠則さんは、閉館決定を知り「東京の片隅にあると思うと、うれしくなる場所だった」と評した。
決定直後、職員らは涙を流して閉館を惜しんだ。それでも、内田館長は「みんな最初は泣いたけど、幕を閉じるわけじゃない。新しい拠点にどう引き継ぎ、何ができるのか。今は頭がいっぱいで、感慨なんて言ってる暇はないの」と前を向いている。
★最後の企画展 事前予約制
原美術館は来年1月11日、開催中の最後の企画展「光−呼吸 時をすくう5人」の会期終了をもって閉館する。新型コロナ感染防止で密の状態を避けるため、入場は公式ホームページからの事前予約制になっている。開館は平日午前11時〜午後4時、土日祝日は午後5時まで。原則月曜休館。
文・宮本隆康/写真・木口慎子
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