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私が考えた「現代の茶室」 四日市工の林さんが最優秀賞 - 朝日新聞デジタル

 茶室の出入り口の「にじり口」は低く狭い。どんな権力者でもお辞儀をしないと入れず、参会者は互いに平等だ。では、現代に必要な茶室とは何か――。三重県立四日市工業高校建築科2年の林那海(ななみ)さん(17)は今年、こんな課題に向き合った。そして、一つの答えを出した。

 建築を学ぶ全国の高校生の設計技能を高めようと、日本建築協会が1955年から実施している「工高生デザインコンクール」。今年の課題は「『現代』の茶室」だった。協会はその趣旨を「私たちは極めて複雑な社会に生きています。国籍や性別、価値観などの立場を超えて、共に時間と空間を楽しむための『現代』の茶室を提案してください」とうたった。

 6月、教師の誘いで「建築研究部」に入った林さんはこの課題を知り、出品してみたいと思った。

 小学6年のころ同じ登校班にいて、今でも親交のある年下の女の子の顔が浮かんだ。彼女は聴覚に障害がある。「もし耳が聞こえなかったら。色を識別できなかったら」。そう考えると、見慣れた街の風景が変わった。「障害者が利用できるトイレが限られている」「エレベーターの位置も不便だ」などと感じた。

     ◇

 読書好きで、村上春樹の作品などを愛読する林さんにとって、特に気になったのが図書館だった。「目が見えなかったら、私は図書館に来るだろうか」。誰もが平等に利用できる図書館。それは「現代の茶室」ではないか。自分が暮らす亀山市の図書館に隣接して、新しい施設を建てるアイデアが浮かんだ。

 コンセプトは健常者にとって「非日常」である「見えないこと」「聞こえないこと」が、障害者にとっては「日常」であることを、同じ空間のなかで理解し合うこと。施設内に、いくつかの部屋を設けた。

 例えば、健常者が図書館で1冊の本を借り、それを「手話室」に持ち込む。そこには聴覚に障害のある人がいて、本を手話で表現する。健常者は自分の借りた本をもとに、手話を学ぶ。今度は、視覚障害者が本を「録音室」に持ってくる。健常者がそれを読み上げ、録音データにして渡す。両者は同じ空間で、同じ時を過ごす。

 男子ソフトボール部のマネジャーとの兼任で、製図用シャープペンシルを使い図面を描き続けた夏休み。消しゴムを使えば、ケント紙を汚す。失敗が許されない繊細な作業を、忍耐強く続けた。

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 共に励まし合った仲間は最良の友人だ。10月初め、協会から「入選」の電話が入ったとき、てっきり上位の賞から漏れたと思い、涙を流した。仲間たちも一緒に泣いてくれた。10月末に文書で届いた結果報告には「最優秀賞」の文字が。涙は喜びに変わった。

 卒業後は建築関係の会社に就職するつもりだ。テレビのリフォーム番組で、顧客が満面の笑みを浮かべるのを見て、すてきな仕事だと思ってきた。「私も人を笑顔にしたい」。夢は1級建築士だ。(黄澈)

     ◇

 四日市工業高校の建築科では今年、林さんを含む9人が各種のコンクールに応募し、全員が入賞を果たした。(敬称略)

 稲垣帆花(2年、国士舘大主催競技1位、長崎総合科学大主催競技4位)▽長谷川代羽(1年、長崎総合科学大主催競技1位、愛知産業大主催競技1位)▽金沢菜々子(2年、日大主催競技2位)▽鯖戸暖香(3年、九州産業大主催競技3位)▽加藤璃子(2年、日本工業大主催競技2位)▽石川日葵(1年、愛知産業大主催競技1位)▽筒井日菜(2年、岐阜女子大主催競技1位)▽林那海(2年、日本建築協会主催競技1位)▽池田蒼生(2年、秋田県立大主催競技1位)

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December 06, 2020 at 07:00AM
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