トンボの碧眼の魔力で「虫屋」に
昆虫愛好家の間で虫好きは「虫屋」と呼ばれる。昭和19年(1944年)、冬ごもりの虫が春の暖かさを感じて地中からはい出る「啓蟄(けいちつ)」の日に大阪で産声を上げた著者は、根っからの虫屋だ。 著者は今年76歳。『昆虫記』で知られるフランスの博物学者ジャン=アンリ・ファーブル(1823-1915年)の母国の文学を研究した。東京大学文学部仏文科卒業、同大学院修了。昆虫に関する著作が多い。30年の年月をかけた『完訳 ファーブル昆虫記』(全10巻・20冊)は2017年の菊池寛賞を受賞した。現在は埼玉大学名誉教授、NPO日本アンリ・ファーブル会理事長を務める。「昆虫少年記」ともいえる本書は自伝的エッセイである。 「私の最初の記憶のひとつは、父親の指に挟まれてぶるぶると身をもがいている、黄と黒の大きな、大きな蜻蛉(とんぼ)である。碧(へき)緑(りょく)(エメラルドグリーン)の大きな眼がこっちをじっと睨(にら)んでいた。(中略)三歳の私はたちまち、一種、呪文をかけるような、虫の眼の魔力にとらえられ、その世界に引き込まれてしまった」 この蜻蛉は「オニヤンマに似た黄と黒の縞(しま)模様(もよう)」と記述していることから、オニヤンマよりやや小ぶりのオオヤマトンボだろう。「三つ子の魂百まで」ではないが、虫屋が誕生した瞬間のエピソードだ。 その著者が「自分の人生全体を通じて、あれが幸せの絶頂であった、と今にして思うのは、私の場合、小学二年生の夏に、ギンヤンマを捕ったあの瞬間だった」。蜻蛉の“貴族”ともいえるギンヤンマ。幼稚園の頃、空を飛ぶ雄姿を初めて見て衝撃を受けた筆者はこう描写する。 「腰の部分はエナメルを塗ったような鮮やかな青、長い尻尾は焦げ茶で、碧(みどり)の眼(め)がこっちをじっと見ている」 蜻蛉の王様、オニヤンマは飛行ルートが予測できることもあって、網で捕らえるのはそれほど難しくない。すばしっこいギンヤンマの方が捕獲困難なことは昆虫少年なら知っている。だからこそ暑い夏の日、無我夢中で乾坤一擲(けんこんいってき)、網を振り、ギンヤンマを捕まえたときの興奮は忘れられない。
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June 09, 2020 at 01:08PM
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【書評】神様がくれた時間を楽しんだ昆虫少年:奥本大三郎著『蝶の唆(おし)え――現代のファーブルが語る自伝エッセイ』(nippon.com) - Yahoo!ニュース
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