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米国で人種差別批判が強まるなか… 現代の価値観に従って「歴史的人物の銅像」を破壊する愚挙:イザ! - iza(イザ!)

【日本の選択】

 米中西部ミネソタ州の白人警官による黒人男性ジョージ・フロイド氏の暴行死事件を契機として、米国で人種差別批判が強まっている。略奪や暴動にまで発展しているデモに注目が集まっているが、今回私が取り上げたいのは歴史上の人物の銅像を破壊する運動だ。

 現在、コロンブスの銅像が各地で相次いで破壊されている。アメリカ大陸を「発見」した英雄ではなく、先住民を虐殺した犯罪者だったというのが理由である。

 一人の有色人種として私はコロンブスのアメリカ大陸「発見」などという表現には強い違和感を覚える者だが、歴史上の人物の銅像を破壊するという行為には全く賛同できない。異論があるのは当然のことながら、コロンブスもまた歴史的人物であったことは否定できないであろう。

 銅像が破壊されているのはコロンブスだけではない。

 南東部バージニア州では州都リッチモンドにあるリー将軍の銅像の撤去が知事によって決定された。リー将軍とは南北戦争の際、南軍を指揮した司令官である。あまり日本ではなじみがないが、米南部では絶大な人気を誇る将軍である。

 日経新聞の上級論説委員である大石格氏は『アメリカ大統領選 勝負の分かれ目』(日経プレミアシリーズ)の中で次のように指摘している。

 「南部に住む白人は、奴隷制度は悪だったといわれても、奴隷を必要とした南部のプランテーション農法は時代遅れだったといわれても、南北戦争を引き起こした南部連合のジェファソン・デイビス大統領は無謀だったといわれても、反論しない。だが、アメリカ連合軍を率いたロバート・E・リー将軍をあしざまにいわれたら……黙っていられないだろう」

 いうまでもなく現代において奴隷制を擁護するのは愚かである。しかし、その時代に生きた人々を現代の価値観で裁き、否定することは妥当なことだろうか。

 古代ギリシャの哲学者アリストテレスは奴隷制を擁護する議論を展開していた。だからといって、アリストテレスの『政治学』『ニコマコス倫理学』を読むべきではない、という議論にはならないはずだ。

 現在でも多くの鹿児島県民は西郷隆盛を敬愛してやまない。西郷は西南戦争という日本における内戦の首謀者であったということもできる人物だ。しかし、上野公園から西郷隆盛像を撤去するなどという事態になれば、多くの国民は反対の声をあげるだろうし、私もその先頭に立ちたいとすら思う。

 時代の中で人間は生きている。現代の価値観に従って歴史的人物の銅像を破壊し始めれば、全ての歴史的人物が否定されることになる。正義の名の下に銅像を破壊しはじめれば、全ての歴史を否定することになる。歴史の前に謙虚であるべきだ。

■岩田温(いわた・あつし) 1983年、静岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、同大学院修士課程修了。拓殖大学客員研究員などを経て、現在、大和大学政治経済学部政治行政学科准教授。専攻は政治哲学。著書・共著に『「リベラル」という病』(彩図社)、『偽善者の見破り方リベラル・メディアの「おかしな議論」を斬る』(イースト・プレス)、『なぜ彼らは北朝鮮の「チュチェ思想」に従うのか』(扶桑社)など。

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June 15, 2020 at 06:00PM
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