COVID-19はインディペンデントなライブ会場を危機的状況に陥れた。パンデミックによって3月半ばにアメリカ国内の夜の歓楽街が閉鎖されたことに伴い、多くの店舗がGoFundMeなどの寄付サイトで、自宅待機中のスタッフのための緊急救済基金を募った。
ところがニューヨーク・ブルックリンにある音楽ヴェニューSaint Vitusはそれとは違う方法を選択した。4月17日、彼らはキックスターターにページを開設し、このクラウドファンディング・プラットフォームを活用することにしたのである。本来のキックスターターは、スタートアップ・プロジェクトとイニシアチブ(アルバム、スマホのアプリ、ボードゲームなど新アイデア)の実現支援に特化したクラウドファンディングで、困窮するビジネスを助けるものではない。
キックスターターのページ冒頭には「Saint Vitus Stays Home:みんなに愛されるブルックリンのライブ会場でメタルバーのSaint VitusがCOVID-19閉鎖に負けない支援を」というキャンペーン・タイトルが書かれている。寄付者への返礼も5ドル(537円)のチケットと30ドル(3222円)の限定版Tシャツから75ドル(8057円)のサイン入り写真とThursdays Tucker Ruleの100ドル(1万742円)相当のドラム・レッスンまでさまざまあり、多額の寄付をした人は1年間ライブに無料招待される。このキャンペーンの目標額は1万5000ドル(161万円)だったが、開始後3時間以内で到達してしまった。そしてこのキャンペーン期間が終了する6月6日までに、Saint Vitusは当初の目標金額の10倍に近い12万5000ドル(1342万円)の救済金を集めた。
パンデミックで危機的状況に陥ったアーティスト、コンサート・プロモーター、小規模会場のオーナーが成功する例は非常に稀だ。さらに13%を超える失業率が示す通り、すでに収入が激減した人々から寄付金を募ること自体が非常に難しい状況でもある。しかしSaint Vitusの共同オーナー兼ブッキング担当のデヴィッド・カスティロは、キックスターターでの成功の要因はSaint Vitusのライブハウスとしての知名度に加えて、同クラブならではの商品があることだと結論づける。「CBGBと同じだ。CBGBのTシャツを着ている人がいたら、周囲はその人がパンク好き、ニューウェイヴ好き、ハードコア好きだと推測するだろう」とカスティロ。確かにCBGBのようなに個性が際立つクラブはライブ会場としての価値以上のブランド・イメージを持っている。これをSaint Vitusに当てはめると、同クラブで販売している「Satan is great, whiskey is super」と書かれたTシャツを着ている人を見たら、周囲はこのTシャツを献身的なメタル・ファンの意思表示とみなすわけだ。
【動画】Saint Vitusでライブをするイーグルス・オブ・デス・メタル
Saint Vitusはアーティストのためにアーティストが運営している場所
ブルックリンのグリーンポイントの北端にある地味な黒いドアに隠れたSaint Vitusは、2011年のオープン以来、パンデミックが起きる前までほぼ休まずに営業を続けてきた。ここの窮屈なバーも、収容人員の少なさも、活気のあるライブハウスの評判を高めるもので、メガデスやペンタグラムなどのメタル・レジェンドも出演しているが、ブリンク182やゾラ・ジーザスなど、メタル以外の幅広いジャンルのアーティストもライブを行なっている。特にゾラ・ジーザスなどはセットの最中に戸外に出て吹雪の中で歌った。このライブハウスはレジェンドからレジェンドに進化中のアーティストまでが集まる場所なのだ。
【動画】吹雪の中、Saint Vitusの外で路上パフォーマンスを敢行するゾラ・ジーザス
2014年、ニルヴァーナがブルックリンのバークレイズ・センターでロックの殿堂入りを果たしたあと、クリス・ノヴォセリックとデイヴ・グロールがSaint Vitusに登場し、ゲスト・ヴォーカリストにジョーン・ジェット、キム・ゴードン、セイント・ヴィンセントを迎えて、親密な空間の中でトリビュート・ライブを行なったこともあった。
救済金集めに成功した要因は、有名なアーティストとの関連は少なく(とは言え、トップ・アーティストがリターンに名を連ねたことが助けとなっている)、このクラブに対する信頼と仲間意識が大きいと、クラブの常連客と常連の出演者たちは言う。ミュージシャンのためにミュージシャンが運営しているのがこのクラブだ。事実、カスティロ自身も2つのバンドで活動している。「そもそも自分のコミュニティにいるのは端から苦労しているアーティストたちで、演奏できる場所が閉鎖されただけで大きな痛手だ」と、元デリンジャー・エスケープ・プランのリード・ギタリスト、ベン・ワイマンがローリングストーン誌に語った。「Saint Vitusも同じような存在で、アーティストのためにアーティストが運営している場所だし、相当DIYなクラブだね」と。
また、ミュージシャンのスティーヴン・ブロドスキーはローリングストーン誌にこんなメールを寄せてくれた。「このクラブはライブ音楽のホスト的存在を超えている。(ヘヴィメタルを題材にしたテレビのトーク番組の)『Two Minutes to Late Night(原題)』が始まったのもStain Vitusだ。ここではヘヴィメタル・ヨガのレッスンも行なわれるし、ゴシック系のアートやクラフトを扱うイベントも開催されるし、グルーヴィーな映画の夕べとか、元ロッカーのライターが出した本のサイン会とか、いろんなことをやっている」
リターンはクリエイティヴなプロジェクトに限定
Saint Vitusの創造性の高さがキックスターターのディレクター、メレディス・グレイヴスの注意を引いた。グレイヴス自身もノイズパンク・バンドPerfect Pussyのフロントウーマンだ。カスティロ、共同オーナーのアーティー・シェパード、ソーシャルメディア・マネージャーのキョロリン・ハリソンと手を組んだグレイヴスは、Saint Vitusの支援金募集キャンペーンをライツ・オンの出発点とすることにした。
このライツ・オン、キックスターターの新たなイニシアチブで、COVID-19のパンデミックで苦境に立つライブ会場、アート・ギャラリー、フェスティバル、パフォーマンス・スペースなどの文化的施設を、パンデミック中だけでなくこの先も支援を続けるクラウドファンディング・サイトだ。ライツ・オンではライブ会場のオーナーが支援金を募るためにキックスターターのプロジェクト・テンプレートを利用できる。ただし、募金の結果として実現されることや寄付者へのリターンはその会場独自のクリエイティヴなプロジェクトに限られるのだ。例を挙げると、チュートリアル、ワークショップ、特別なイベントの無料入場券、ライブ配信、ポッドキャストなど。
「私たちがもう一度頑張ってほしいと思うクリエイティヴなプロジェクトとしてキックスターターにライブ会場を掲載する方法を実現することは、当社のモットーにも通じることでもあり、何よりもたくさんの会場にキックスターターを利用してほしかったからだ。幸いにも、ライツ・オンはその思いが具現化したものとして生まれた」とグレイヴスが説明した。
また、彼女はSaint Vitusチームがまだ開発途中だったキックスターターのライツ・オン・ツールを果敢に活用したことを讃える。そして、キャンペーンが進行する最中、彼らが毎週クリエイティヴなリターンを一つずつ増やし、ときには週に2つ増やしたこともあり、そういう彼らの能力が影響して、新しいポスターや商品が発表されるたびに新たな関心を集めたと言う。グレイヴスの説明では「世界に向けて週に2回告知して新たなリターンをアップしているうちに、キャンペーン期間の6週間で、スマホのアラームを火曜日の5時にセットしてSaint Vitusの新情報をチェックする人が出てきた。みんな、火曜日の5時になるとサイン入りの奇妙なアンスラックス・グッズや、驚きのベーシストのベース・レッスンなどが発表されると気づき、人々の関心が惹きつけられた」ということだ。
それでも公的な資金援助は必要不可欠
現在アメリカではライブ・ミュージックは無期限で停止されており、この業界が再オープンするのは2021年となっている。ローリングストーン誌が12カ所以上の小規模ライブハウスに問い合わせたところ、資金援助がない場合でも7月末までは何とか維持できるが、日々パンデミックの詳細が明らかになっている現状ではそれも定かではないと回答してくれた。Saint Vitusも加盟しているNational Independent Venue Association(NIVA)のようなライブ会場の非営利組織は、公的な資金補助が必要だとして、減税や保険の拡張などを連邦政府に要求している。カスティロは現在、集まった寄付金をどのように活用するかの話し合いを続けていると言う(キックスターターのポリシーで、Saint Vitusキャンペーンで集まった寄付金はキャンペーンが終了する6月5日以降に使用できるようになる)。
「これは継続中のプロジェクトなので、使いみちを決めつつあるとだけ言っておこう。第一の目標は仕事に戻ることで、当面成すべきこととスタッフのバランスをはかりながら、それを行なっていく。しかし、これから寄付金が入ってくることは我々にとって大きな安堵になっている」とカスティロが言う。
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June 10, 2020 at 04:00PM
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